雪化粧
不意打ちのような休日の雪だった。
ベランダから見れば横殴りの吹雪のような荒天だ。
カミさんはちらりと外を見やると、ふんという感じですぐに窓を閉めてしまう。
私はといえば5分でも10分でも眺めていられる。
こんな時生まれ育ちの違いを感じる。
いまでこそ、そうでもないが、カミさんが大学進学で関東に出てくるまでの18年間、富山の冬は2階まで積もる豪雪だったという。
北陸の冬はながく、鉛色の空と雪に閉ざされ、どんなにか太平洋側が羨ましかったかとよく話す。冬は外に出ることもままならず、家の中で過ごすしかない。
テレビのチャンネルも少なく、たいていは父親の見ている番組に付き合うしか無かったらしい。だから、本を読んだり、勉強に費やす時間が自然と多くなる。
富山県の人の学力が高いのはそのへんの自然環境もあるのだろう。
私は子供のころは雪が降れば飛び出して雪だるまやカマクラをつくったりソリあそびや雪合戦をした。ありがたい雪だった。
そういう、刷り込みがあるからか今も雪は新鮮で、窓からの眺めは美しいと感じるのかもしれない。
でも「きれいだねえ」といっても誰も「そうねえ」とは答えてはくれない。
ちょっと寂しい。
さっき、ベランダで洗濯物を干していると
ざざざ、ガッガッガという音がする。
身を乗り出してみると、溶けた雪が昨夜のうちに凍ったのだろう。
トラックがその氷を踏みつけて徐行する音だった。
今日は日向は結構暖かいが夜間にシャーベットの雪がまた凍って危険な状態になるだろう。
一番怖いのは黒い鏡のようなアスファルト。
薄い氷の膜が貼っていて、油断すると滑るのだ。
1週間くらいは日陰の雪が残る。
気をつけなければ・・・
外出もままならずラジオを聴く。
永六輔の「誰かとどこかで」
NHKの女子アナが最近はしゃぎすぎているというのハガキを紹介していた。
なんでも面白楽しくしていればいいってもんじゃない。
昔は声だけを聞いてこれはNHKだな
とか
TBSだなとか分かったという。なるほどそうなのか。
加賀美幸子さんとか、かんで含ませるようなゆっくり落ち着いた声だった。
くだらないバラエティーに必ずいる司会の女子アナ
ミニスカートにつやつやの髪、メイクも完璧に決めてアイドルのように笑顔を振りまく。
しかし、私はとなりのお笑い芸人とは違うんですというようなオーラを醸し出しているけれど、こっちから見れば対した違いはないんだが。
無理に作ったような笑顔など見たくない。
天気予報やスポーツのコーナーになるとなんで笑顔でなければならないのか。
テレビはなんでも、楽しそうにする。嬉しそうにする。明るくする。元気そうにする。
わたしなどは引くばかりである。
たまには永六輔のいうような苦言も必要なんじゃかろうかと・・・・