矢代まさこを知っていますか?
[
]
その漫画雑誌がなぜ私の手元にあったのか、今では確かめるすべはありません。とにかく小学生だった私がその漫画を見てハッとしたのは多分事実です。
小さい頃から絵が好きで漫画の虫。
子供ながらにちょっと絵にはうるさかった私は、顔の面積の半分が目で、まつ毛バシバシ
しかもこれでもかと云わんばかりの★印...
そんな少女漫画に当時は満腹状態でした。
その漫画
内容はというと確か知的障害がある子が自分が鳥であると信じて最後に崖から飛び降りてしまうという感じの悲しい物語だったと思います。
当時の私を「驚愕」させたのは“目でした。
星なし。まつげもひかえ目。濡れたような黒目がちのつぶらなその瞳。
きれいでした。おおげさに言えばカルチャーショックです。
その作者こそが矢代まさこだったのでした。
いかがなものでしょうか・・・
その日から本屋で少女漫画雑誌の表紙に矢代まさこの名前さがし行脚(^^);が始まりました !マーガレット。フレンド。ファニー。などなど・・・・・うかつにも少年誌はノーマークだったのですが・・・
再会したのは意外な「少年マガジン」
「白神」というスキーでオリンピックを目指す少年の挫折と淡い恋の物語でした。たまたま遊びに行った親戚のおじさんのアパートの床にぽいと置いてあったのです。こんなところで再会するとは!運命を感じました(笑)
しばらくして次に出会ったのは中学生になって定期購読していた中一コース。
タイトルは「ヨーキのおしゃれ作戦」学園コメディでこれまでのシリアス路線とは別物でびっくり。続いて「愛すべきメガネ子ちゃん」も愛読しました。
掘り出し物だったのは貸本屋のくじで当たった「こだま」(若木書房)におさめられた「秋の日」
みんなと遊ぶのが苦手なやっちゃんが木材置き場で面白い遊びを見つけますが、ある日、いつものように行ってみると木材が高く積まれてしまっていて…というお話。矢代作品の“ルーツ”と言えるのかもしれません。
「ようこシリーズ」という連作を描いていたということもこの本で知りました。
さてさて、ファニーで見つけたのは「ブラジル・ブラジル!」
漫画を描きながらブラジルに行くことを夢見る若者たちの青春群像。この雑誌をクラスで読んでいたら「へえーこんなの読んでんのぉ?」
と女の子に冷やかされました。確かにこのころから私の漫画に対する嗜好はすこしアブノーマルかもと自覚し始めていたようです。
同じくファニーの「黒衣のおもわく」これはО・ヘンリーの原作によるもの。同じころ読み切りの単行本で「ジェーン・エア」(ブロンテ原作)も一時期手元にあったんですが。、これもまた、いつの間にかなくなってしまいました。(涙涙)
その後「由美子別離(わかれ)を知らず」「風が通り過ぎる」 「サチのポプラレター」「お空にかいたラブレター」と出会います。矢代まさこの描く恋愛は屈折してはかなげでした。
単行本では「ノアとシャボン玉」(朝日ソノラマ)・「サーカス」(小学館
「ノアをさがして」(主婦の友社)が今手元にあります。
40数年間、私の心をとらえて離さない不思議な矢代作品たち!
なんとなく、あの時の出会いが私の中の何かを決定付けてしまったような気がしてならないのです。
こんなことなら、みんな保存しておけばよかったぁ、悔やまれます。
後年「睦月とみ」というペンネームで活動したようですが
いまどうしているのでしょうか
「トムピリビに会った?」のラストです。
みんながあたしの夢をこわそうとした
けれど、あたし忘れない
大きくなっても忘れない トムピリビのおまじない
こんな小さな女の子のこんなちっぽけな夢を
あんなにあんなに いっしょうけんめいになってまもろうとしてくれた おとながいたことを
ゆきは忘れない かえったらみんなにいってやろう
学園のみんなに トムピリビにあってきたよって
みんなが笑ったら
あたしはもう ビクビクしないでにらみかえしてやろう
矢代作品に出てくる主人公たちは大人も子供もあちこちに頭をぶつけながら自分の夢を追い求めます。内向きでそれは時には社会に背中を向けてすねているようにも映ります。
でもその純粋さ、はかなさ、が心に迫ります。そしてあのつぶらな美しい瞳も。