自転車泥棒

1948年 イタリア映画 モノクロ


お父さんが6歳の息子と一緒に盗まれた自転車を必死に探すお話です。


失業中のアントニオがようやくありついた仕事は町のポスター貼り。
質屋から買い戻してきた大切な自転車。
保管場所はもちろんうちの中。翌朝、彼は張り切って仕事にでかけます。今日のお弁当はお母さんお手製のオムレツです。



長い梯子を片手にポスターと糊を自転車に積んで仲間と出動。
先輩のようにしわなくきれいに貼るのは結構難しいですぅ。
「この仕事は賢い人間にしかできない。がんばれよ」なーんて先輩は言いますが。



さて、大通りで今度は一人でポスターを張るアントニオです。ここで事件がおこります。
作業に集中しているすきをつかれて若い男にそばに置いてあった自転車を盗まれてしまうのです。!!!「まてー!」
必死で追いかけますが、やがて自転車は男とともに人ごみの中に・・・

警察に掛け合いますがまったく相手にされません。「届け出は受理した。自分で探せ」ですと。冷たいものです。
友人のバイオコッジは「あした一緒に探そう」といってくれました。



翌朝。長い一日の始まりです。


街には自転車やその部品、タイヤ、フレーム、ベル、などの露店がずらりならんでいます。もしかしたらもう分解されて部品として売られているのかもしれないですね。気の遠くなるような話です。
同じメーカーのフレームにペンキを塗っている男がいました。
「製造番号を見せてくれ」
「いやだね、」
押し問答です。警官がやってきて男はしぶしぶそのフレームを差し出します。違う番号でした。がっかりのアントニオ。
「人を疑うのもいいかげんにしろ!」
憎まれ口をたたく露天の男です。


街の中を一台の自転車を求めてさまようアントニオと息子ブルーノ。
やっと犯人を自宅まで追いつめます。でも、なにしろ証拠がない。盗った、いいや盗ってないないの水かけ論です。

騒ぎを聞きつけて近所の人がどんどん集まってきます。
 「証拠もないのに人を犯人扱いいやがって!」
多勢に無勢。悔しいけど引き揚げるしかありません。



疲れ果て、打ちひしがれ、歩道に座り込む二人。
自転車がなければ明日からまた職探しの生活に逆戻りです。
家族が路頭に迷います。

ふと見ると、ビルの入口に一台の自転車がぽつりと・・・
アントニオの心に黒い影がよぎります。
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街を行く人々は一様に早足で顔はとげとげしく。
街のいたるところには爆撃の爪痕。
荒廃した人々の心。
アントニオにとっては渡る世間はまさに鬼だらけです。


6歳なのにガソリンスタンドで働くブルーノがあの「鉄道員」に出てきた少年にダブりました。けなげです。
それにしても自転車一台をいい大人が恥も外聞も捨てて、死に物狂いで探しまわるという図はすさまじいものがあります。
不器用なほどにストレート。リアリズムというのでしょうか。
何の飾りもなく、心に響いてきます。
飽食の今日では、もう作れない映画ではないでしょうか。
★★★★!