マンガのこと

漫画を読み始めたのは4年生くらいの時だったか。サンデーとマガジンとキング、それに少年という月刊誌がありました。それぞれ「贔屓」の漫画があったけれど、全部買うお金はないのでとりあえずはサンデーが多かったようです。
ある時ふと漫画ってどうやって描くんだろうという疑問が湧いてきました。

どうも鉛筆で描いているようではないし、線に強弱がついているのも不思議でした。当時漫画を描くような物好きな友達はまわりにいなかったので、聞いてまわることもできず、どうしたものかと困っていたとき、偶然本屋で「まんがの描き方」という本をみつけ、これだ!と買い求めました。

そして漫画を描くには、ペン、インクあるいは墨汁、ケント紙、烏口(からすぐち)、羽根ぼうき、定規が必要だということがわかりました。でも、紙といえば画用紙とわら半紙しか知らないし羽根ぼうきに至ってはなんじゃこりゃです。だいたいどこにそんな物が売ってるのか、いくらするのかもわかりません。

とりあえずペンとインクは文房具屋で買えました。ペンはペン軸にさして使うということも判明。しかし、いざ線を引いてみるとこれがとても描きにくく、思いどうりの線がかけません。一定の方向にしか線が描けないのです。

ケント紙は画用紙よりも高価で真っ白でとてもなめらかな、コシのある紙でした。羽根ぼうきは字のごとく、鳥の羽根を束ねた物で、消しゴムのかすを払うのに使うようです。

烏口は店のショーウィンドーに飾ってあり、かなり高価なしろ物でした。文房具というよりは「製図用具」という雰囲気をぷんぷん漂わせ箱に鎮座していました。迷ったすえ私は思い切って、一番安いのを買ったのでした。
 本によるとこれは「コマ」の枠線を引くのに使うそうで、向かい合った2枚の先端のとがった刃の隙間にインクを流し込み表面張力を利用して線を引く道具なのです。
 線の太さは刃の間隔をネジで調節します。しかし、いざやってみると隙間を細くしすぎるとインクが出ず、反対に広げすぎるとボトリとインクが落ちるし、やっかいな物でした。しかも長い線を引くと途中でインクが切れたりするので、そのうち放り出してしまいました。

 このように私は昔から何事も熱しやすく冷めやすい性格で、道具を集めてしまうとそれで満足してしまうのでした。