5日目


疲れのせいか、今朝起きたのはなんと9時を過ぎていた。
急いで風呂に入り身支度と持ち物を揃えて駐車場に向かった。







杖をついた高齢の女の方がみえた。


ゆっくりゆっくりと見てくれた。

ひととおり見て、私に視線を向ける。


あ、と思う。



「有難うございました」
そして会話が始まった。



その人は


この地でずっと豆腐屋さんを営んでいらしたという。
この流山でうまれ育ち結婚して子育てをして今日に至るはえぬきの地元の人だった。

川には河岸が出ていたこと。
この本町が賑わっていた頃を間近に見てきた。
そして、平成になって近所にヨーカドーが出来た頃から売上に影響が・・・・


そして閉店。




「若い人は白ければそれが豆腐だと思っている。」

本当の豆腐の味とはどういうものか知らないと。



その人は少し悔しそう語った。一つまた一つ馴染みの古い店が消えてゆくさまを見てきた人。

そして、豆腐一筋に生きてきたことへのプライド。


その思いは私が街道を描くときの思いと
少し似ているのかもしれない。私はただの物見遊山。野次馬のようなものだが、その人は


ご自分の実体験としてうつろう時代を見てきた。

その人の話を聞きながら、想像力を総動員して、昭和の初期の風景をイメージした。スーパーなどなく小さな店が軒を連ね、江戸川には小舟が行き来していた頃を。



私は心躍らせてその人の話を聞いていた。もっと聞きたいことはあったけれど時間は来た。





有難うございました。お元気で。












今日の一枚

友達にいただいたカトレア