dear SHUNSUKE


廃刊となった「みずゑ」




私には特に尊敬する画家とかはいないのですが、いつかここでご紹介したいと思っていたのが松本竣介です。特にこの「立てる像」(1942年 OIL  CANVAS)が好きです。




ほとんどモノクロに近い押さえた色調。焼け野原(多分・・・)にポーズもなくすっと立つ自画像。粗末なサンダルにジーンズ地(多分)のジャケット。きらり光る金ボタン。空には丸い雲が三つ。白と黒の絶妙な面積比。左手は固く握り、なぜか右手は少し開いています。よく観ると下の道端には野良犬や荷車を引く男のシルエット。・・・にしても風景と比べて竣介が大きすぎます。このアンバランスはもちろん意図したもの。
一度だけ実物を見た事があります。眼差しはどこかあやふやで、さびしそうなというのかと言えばそうでもなく、何か言いたそうでもあるし、なさそうでもある。このなんともいえない雰囲気がいいのです。




もうひとつだけ、ご紹介。
「街」(1938年 OIL 板)蒼いバック、繊細な線描の白い街。モダンな赤いドレスの女性。山高帽の男に靴磨き。線と面とが織りなす不思議な都会風景。この無機質な線はどうやって描いたのかな。サインペン?烏口?
竣介は好んで「街」と「人」を題材にしました。

そこに自分との共通点があるのかな。

竣介は1912年に東京に生まれました。藤田嗣治やモジリアニ、野田英夫らに影響を受けながら画風も二転三転。二科展に出品したり個展や麻生三郎らとグループ展を開いたり同人誌を発行したり旺盛な制作活動を展開。1948年、心臓衰弱のため36歳の若さで世を去りました。あまりにも早すぎますね。


聴覚に障害があった竣介。その目には当時の東京の街はどんなふうに映っていたのでしょうか。
「もっともっと描いて欲しかったよ・・・戦争さえなければ!」


この写真をみるたびに想うのです。